警視正は彼女の心を逮捕する
「悠真の告発で」

 綾華さんの実家から、今まで売買されていた美術品の本物が、多数発見されたと教えてもらった。
 私はタオルの下で目を瞠る。

 奥さんの実家を告発する。
 どれだけの葛藤があったことだろう。

 同時に敵わない、と思ってしまった。
 私はウジウジと悩み、悪い方に流されようかなとすら考えてしまったのに。
 ……でも。

「ごめんなさい、鷹士さん」

 鷹士さん親友を追い詰めてしまったことについて、おそらく自分を責めている。

 私がきっかけを与えてしまった。
 仲良かった二人の間に、私がヒビを入れたんだ。

「私がイタリアで贋作だと気づかなければ」

 鷹士さんと悠真さんは、今も笑ってお酒を酌み交わせたかもしれない。

「君は悪くない」

 なのに、鷹士さんは私を責めない。

「日菜乃が悩む必要はない。贋作を作って売った人間が悪いし、君は正しいことをした」

 鷹士さんは自分も苦しいのに、優しいから私を慰めてくれる。

「あいつは頑張り屋だから。……きっと、やり直せる」

 鷹士さんの、自分に言い聞かせるような声。
 濡れタオルの上に、熱い雫が落ちてきた気がするけれど、知らないふりをした。

 きっとこれから悠真さんのことを、裏から支えてあげるのだと思う。
 私も旦那様に倣いたい。

「……私も、悠真さんになにかしてあげられるかな」

 呟いたら即、反対された。

「ヤキモチを妬いてしまうから、やめてくれ」
 
 え?
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