警視正は彼女の心を逮捕する
「鷹士さん、結婚はあなたにとって牢獄ですか」

 質問したくせに『そうだ』と肯定するところを見たくなくて、抱きつく。
 彼の左手を探る。
 薬指に金属が在るのを確認して、ほっとする。

「結婚指輪は牢獄に繋ぐ手錠なのかもしれない。だけど私は、あなたのことを一生捕まえておきたい。だから、指輪を外さないで……っ」

 あなたを縛りつけてしまう資格は、私にはないのに。

「日菜乃」

「私は、鷹士さんの幼馴染で恋人で奥さんで……、全部でいたい」

 刹那、息が出来ないほどにキツく抱きしめられた。

「俺の唯一、大事なのは君だ!」

 熱情が迸るような声。

「日菜乃が好きで好きでたまらない」

 本当に?
 私とおんなじ『好き』でいいの?

 鷹士さんが私をぐい、と引き離す。
 目を覗き込んでくると、一息に言い放った。

「賀陽日菜乃、君を逮捕する。罪状は騒乱罪・窃盗罪及び殺人教唆だ」

 物騒な単語ばかり。
 ……あれ。
 美術館でプロポーズされたときにも言われた。
 なにかの比喩? 
 目を白黒させていると。

「ホットチョコレートを淹れてくる。その間に考えておいて」
 
 ……それもあった。
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