最悪な結婚のはずが、冷酷な旦那さまの愛妻欲が限界突破したようです
「すみません。笑ったりして。だって貴治さん、出会ったときは、家を手放さない私を理解できないって冷たかったのに」

 貴治さんはばつが悪いといった顔でふいっと視線を逸らした。

「臨と会った頃は、数字やデータがすべてだった。損得で考えるのが当然だと……」

 私の第一印象とあまりにも合致していて、苦笑する。

 すると貴治さんは改めて私に目線を戻し、ふっと笑った。

「でも臨を見て、臨の考えを聞いているうちに、家や土地はそれだけじゃないって考えるようになったんだ。ただ生活する場所で簡単に替えが効くという認識は誤りだって気づいた。家に帰って臨がいると、それだけで幸せに感じる。どんな土地や家にもそれぞれの想いがあるんだな」

 彼が私と一緒に過ごして考えが変わったのなら、それは私も同じだった。

「私も貴治さんに出会って、この家を手放す決意ができたんです。ずっと形あるものにこだわっていました。なくしちゃいけないって。でも、貴治さんと暮らすようになって、いつの間にか私の帰る場所や家は貴治さんのそばになっていました。変わるのが怖かったけれど、大事なのは形だけじゃないんだって貴治さんが気づかせてくれたんです」

 おばあちゃんも、おばあちゃんの思い出も大事にする。それをもって、私はこれからの人生を歩んでいくんだ。

「これからの人生、一緒に歩いてください」

「もちろん。俺が初めて自分から望んだ相手なんだ。絶対に手放さない」

 貴治さんに力強く抱きしめられ、私も彼の背中に腕を回す。

 おばあちゃん、私、幸せになるから。ひとりじゃない。この人と歩いていく。誰よりも幸せにしたい相手を見つけられたの。

 棚の上に飾っている写真に写る祖母は、幸せそうに笑っていた。

Fin.

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最後まで読んでくださりありがとうございました。
こちらの作品は本日(4/17)よりマカロン文庫としで電子書籍化し配信開始となりました。
書籍版では貴治目線の番外編を間とラストに合わせて3章分、6800字ほど書き下ろしています。
さらには甘いシーンもぐぐっと加筆しています(^^)
あのとき貴治がなにを思っていたのか、完結後のふたりの幸せな未来など、どうぞサイト版と合わせて書籍版も楽しんでいただけると嬉しいです。
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