白雪姫は、もう目を覚さない
第1章 出来損ないの王子

第1話 失敗作

生きる意味なんて、持っていなかった。
いや、最初は持っていたのかも知れない。
でも、いつの間にか無くしてしまった。

俺がこの家の“失敗作“になったのは、いつからだったんだろう。

医者一家の次男。
そんな肩書が勝手についてきただけ。

父は有名な大病院の院長。
兄は将来を約束されたエリート研修医。
今は専業主婦をしている母も、昔は優秀な外科医。

そんなエリート一家に生まれた、俺。
それなのにテストはほとんど赤点、教師からの呼び出しも日常茶飯事。
“出来損ない“そんなラベルの貼られた俺の名前は、家ではもう、ほとんど呼ばれることすらなかった。

「医者の家に生まれたのに、なんでこうなったのかしらね」

それが母の口癖だった。
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