白雪姫は、もう目を覚さない

第5話 また、通りかかってね

その日、私はベッドの上で空を描いていた。
ふと顔を上げると、病室の扉が少しだけ開いているのことに気がついた。

誰かが、こっちを見ている。

扉の向こうには、制服の男の子。
こちらを見て、目が合った瞬間目をそらす。
でも、その不器用な仕草が少しだけ気になった。

「あの......何か用ですか?」
「いや、別に……通りかかっただけ。」

素っ気ないのに、どこかまっすぐな返事。

「絵、描いてたんだろ。」
「うん。空が綺麗だったから。」

「あの……あなた、ボランティアの人?」
「……いや、違う」
「そうなんだ。じゃあ、なんでここに?」
「さあ。勝手に連れてこられただけ」

会話はそれだけだった。

でも、なぜかその背中が遠ざかるのが少しだけ寂しくて、私は声をかけた。

「また、通りかかってね」

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