白雪姫は、もう目を覚さない

第2話 失った期待

病院の前に立つと、なんとも言えない息苦しさに襲われた。
無機質な白い壁、出入りする白衣の人たち、
見慣れたはずなのに、“ここはお前の居場所ではない“
そう言われているようだ。

昔、親父は俺を連れてきては、
「将来、お前は医者としてここで働くんだ」
と言っていた。

小さい時は、そんな親父の期待に応えようと必死だった。
でも、俺はそんな親父の期待に応えることはできなかった。

そして、そんな俺は何度も兄と“比較”された。
兄貴は、俺と違って優秀で両親にも期待されている存在だから。
「お兄ちゃんみたいにちゃんとしなさい」
「お兄ちゃんは優秀なのに…」

周りからは、そんな言葉ばかり聞こえてきた。

だから、嫌だった。
ここの空気も、人も、匂いも、全部。
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