大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
(あ、あれ…?)

ミトはセルファを目の前にして固まっていた。
3日前、セルファは無事完治し、その後は問題なく公務をこなしていると聞いていた。
そして、今夜はミトの日だったのだが、目の前にいるのは影ではなくセルファ本人なのだ。

(え~っと…)

混乱して困惑して思考停止状態のミト。

「久しぶりですね、ミト。心配をかけてしったけど、私はこの通り元気になりました」

穏やかに微笑むセルファ。

「あ、はい」

辛うじて返事をするミト。

(これは一体どういう事態?)

「どうしました?」

「え!?いえ、中へどーぞ」

このまま立ち話はあまりにも不自然だ。
ミトはとりあえずセルファを部屋に招き入れた。

「今飲み物を準備しますね。少し待っていてください」

「ありがとう」

セルファはソファに座った。
ミトは温かいお茶の準備をしながら、この状態を理解しようと努力してみた。

セルファはユフィーリオ以外の妃との夜を拒んでいたはずだ。


昼間セルファが元気に公務をこなしているのに、夜側室達の部屋にこないのは不自然だろう。
もし完治して公務をこなしているセルファが夜来訪しなかったら、アリアは不満を爆発させるかもしれない。
ティアラも怒るだろう。
そうならないように、回復していない影に代わって、仕方なくセルファが側室達の相手をしているのだろうか。
これならつじつまが合う。

(そういうこと…なのかな、やっぱり)

少しずつ思考がまとまってきた。
影が帰国してから既に10日が経っている。
影はまだ病床なのだろうか。
急に心配になってきた。
なってきたのだが…。

(ん?ってことは、私、もしかして今大ピンチ?)

その通り。
ミトはようやく自分の置かれている状況の悪さに気付いた。

(どどどどどーしよーーー!!!!)

そして青くなるのだった。
なのに、なぜ入れ替わったのだろう?

3日前にセルファも無事完治したはずだった。
しかし、それはセルファではなく影の方だ。
そして、今日は影ではなくセルファが来た。
ということは、影はまだ具合が悪いままなのだろうか?

そう言えば、一昨日大国から来賓があって、夜にパーティーが行われた。
珍しくミトたち側室も参加をするよう言われた。
あれに間に合わなかったから、途中で影とセルファを入れ替えたのだろうか。
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