大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
「ユフィ、王宮に戻っておいで」

「え…?」

「明日から、また毎晩一緒だ」

「………本当?」

「もちろん、本当だよ」

そう言って、チュッと短いキスをするセルファ。
ジワジワとセルファの言葉の意味が浸透してくる。

「影武者の人が復帰したの?」

「ああ」

「ほんと…に?」

嬉しくて涙が溢れるユフィーリオ。

「ユフィ、泣くほど喜んでくれるのかい?」

「だって…」

後は言葉にならず、ユフィーリオはセルファにしがみついて喜びを表現した。
セルファもユフィーリオの体をしっかり受け止める。
泣いているユフィーリオの髪を撫でながら、セルファは苛立ちを必死に誤魔化していた。

ミトと過ごした昨夜、既に影は完全に復活していた。
病に臥していた数日間も含め、全てのセルファの行動を把握し、体調も体型も完全にセルファと瓜二つの姿を取り戻していた。
しかし、ミトとの約束を影に奪われるもが耐えられず、セルファは理由をつけて昨日まで影の復帰を拒んだのだ。

あと4日。そうすれば、ミトを抱くことができたのに。
どうにかして影の復帰を遅らせたかったが、誰が見ても完璧で、ケチをつけるところがどこにも見当たらない。

ならば、夜も自分が動くようにすれば良いのかもしれないが、そもそも自分の言いつけで夜の役目を影が担っている。
今更覆すのは、さすがに気が引けた。
何より、影が復帰しているのに、自分が側室の元へ通えば、ユフィーリオは益々塞ぎ込むだろう。
だから、仕方なく諦めるしかないんだ。

(仕方がない?)

ユフィーリオに触れながら、セルファは自分の思考に違和感を持った。
自分は側室達との逢瀬を続けたいと思っているのだろうか。
ユフィーリオだけを愛し続けると決めたはずなのに。
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