大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
(では、この感情はなんだ…?)

本来全て自分だけに与えられるはずのものを、身代わりとはいえ影と共有しなければならないことが許せないのだろうか。

(そうかもしれない…)

セルファは自分の思考に納得する。
本来だったら、側室たちも自分だけのものだったはずだった。
影さえいなければ、ユフィーリオもその事実を受け入れるしかなかった。
今までの自分の行動を省みず、セルファはそんなことを思った。

影が憎い。
自分は抱いていないミトを、影は抱いている。
それが耐えられなかった。
なぜ身代わりの影が、自分にないものを与えられているのか。

暗い感情を隠すように、セルファはユフィーリオを強く抱きしめた。
ユフィーリオだけがいれば良いと自分を説得する。
影が倒れる前の自分に戻ろうとセルファは必死だった。

それなのに、ユフィーリオが語った自分と初めて出会った話を思い出す。
あれは自分ではない。
影だ。
ユフィーリオが言う初恋の相手は影武者なのだ。

(ユフィだけは渡さない…。自分だけのものだ!)

その夜、セルファは何度も激しくユフィーリオを求めた。
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