大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
次の日、ユフィーリオは王宮へ戻ることになった。
結局、セルファにミトのことを何も聞けなかった。
昨晩は会話する余地がない程抱き合い、気絶するかのように眠りに落ちた。
そして、目が冷めたら既にセルファはいなかったのだ。

別邸では部屋に泊まらない決まりになっているのだから仕方がないが、あんなに求め合った後だというのに、まるで取り残されたような酷い孤独を感じた。
残されたメモには、「僕の部屋で待っているよ」とだけ書かれていた。

(私が戻ると信じて疑わないのね…)

少し前なら信頼されていると喜んだだろう。
だけど、なぜか今は見くびられているように感じてしまう。

(もっともっと大事にして…。私の気持ちを最優先して。私のことだけ考えて!)

それは、求めすぎなのだろうか。
セルファは影武者が復帰すれば、また自分と二人だけの時間を過ごせると喜んでいた。
それで満足できない自分はワガママだろうか。

(でも、本当に喜んでいたのかな…)

どうしてだろう。
セルファは何かを誤魔化していたように感じてしまう。

(何を誤魔化すために?)

もしかしたら、セルファは側室達と、もっと過ごしたいと思っていたのかもしれない。
特に、わざわざ王宮に呼び出したミトと。
根拠はどこにもないが、一度そう思ったら思考を止められなくなった。

「嫌!」

ユフィーリオは顔を両手で顔を覆った。
今までとは毛並みの違う側室、ミト。
行動は突飛で、奥床しさの欠片もなく、誰にでもズケズケと喋りかけると聞いている。
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