大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
(なぜ、そんな子をわざわざ王宮に呼んだの?)

やはり、セルファに確認するまで、心のモヤモヤは晴れない。

その日の朝食、ユフィーリオはダイニング室で食べることにした。
改めてもう一度、側室達の顔を見ておこうと思った。
自分が絶対的上位であると知らしめてから王宮へ戻ろう。

ユフィーリオは時間ギリギリにダイニング室へ入る。
すでに側室達は揃っていて、ユフィーリオが部屋に入ると皆一斉に自分を見た。

「皆さん、ごきげんよう」

まずは優雅に挨拶し、それぞれの顔を眺める。
ティアラは表情を崩さない。それなのに、高飛車な雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。
アリアはおずおずとした上目遣いでこちらを見ている。側室としての気品も落ち着きもない、ただの子どもに見える。
そしてミトは、ポカンとしていた。
なんて品のない女なのだろうか。街に行けばその辺をウロウロしている庶民の女と変わりなく見える。

(こんな女たちに、セルファが心奪われるはずないわ)

ユフィーリオは余裕の笑顔を浮かべ、席に着いた。
そして、無言の食事が始まった。

ティアラはあれから自分をチラリとも見ようとしない。
一方、アリアは食事をしながら度々ユフィーリオを覗き見ている。
ミトは…、と思い目を向けると、バチリと目が合った。
ミトは困ったような顔をした後、ニヘラと笑って目線を料理に戻した。

(なんなのかしら、この子…)

嫌に癇に障る女だ。

「ミト様は、一昨晩セルファから王宮に呼ばれたそうですね」

こんな女に気を使う必要はない。
ユフィーリオはストレートに質問し、話の主導権を自分が握ることにした。

「え!?は、はい」

まさかそんな話題を持ち出されるとは思っておらず、ミトは仰天した。
アリアは暗い瞳でミトを睨んでいる。
ティアラは何食わぬ顔で、しかし実は興味津々に成り行きを見守っていた。
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