大国に嫁いだ小国の姫は国家機密を知り影武者と取引する【完結】
「セルディオ」

ミトはもう一度その名を呼んだ。

「なんでそんな笑顔なんだよ。っつーか、下手に名前なんか呼んで、またポカやらかすんじゃねーだろうな」

セルディオは顔を背ける。
実は赤面していた。

「なによ、ダメ?嫌なの?」

「別に…、好きにすりゃいいだろ」

全然嫌じゃない。
それどころか、多分自分は嬉しいのだとセルディオは思った。

「わかった。好きにさせていただくわ。で、セルディオ、また公務をする予定ある?」

ミトはこの名をすっかり気に入ったようだ。

「また王宮探検するつもりか」

「うん。とっても楽しかった。王宮にいるのはセルディオだってわかってたから、もう心置きなく楽しめたし」

「ああ、知ってるぜ」

はしゃぐミトを思い出して影は笑った。

「しばらくは、どうなるかわかんねーな」

「え?そういうものなの?こういうのって、最初から予定が決まってるんじゃないんだ?」

「通常はそうなんだけどな。今いろいろ立て込んでるんだ」

詳細をミトに説明したくはない。
それに、セルディオにはある1つの考えがあった。

「な~んだ」

ガッカリするミト。

「立て込んでるって、何かあったの?セルディオは大丈夫?泣きそうな理由はそれ?」

しかし、すぐにセルディオの顔を覗き込んで心配そうに聞いた。

「オレは大丈夫だよ」

このイザコザにミトを巻き込みたくない。

「それより、ミトはもう吹っ切れたのか?」

だから、セルディオは話題を変えることにした。
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