悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜




*****




「ステラ様。全て私共にお任せください。さぁ、ゆっくり休んで」

「い、いえいえ。このくらい自分でできますから」

「そう言わずに。ぜひとも我々を頼ってくださいませ。ロイ殿下からも手厚くもてなすように言いつけられておりますので」



バスタブいっぱいに泡とお湯が入ったお風呂に入れられ、私は今、丁寧に数人の女性のメイドたちに洗われている。
そんなメイドたちに私は先ほどから、自分でできるから、とやんわりとお世話のお断りを入れ続けているのだが、メイドたちはそれを軽く受け流し、私の世話を焼き続けていた。

ここはこの街一高級なホテルの客室にあるお風呂場だ。
ロイが私を連れてきたある場所とは、皇族や貴族、はたまた各諸国の権力者等しか利用できない超高級ホテルだった。

何故、私が今、こんな場所でメイドたちに洗われているのか。
それはロイによるある一言が始まりだった。


「ここまで来るのにとても苦労したんだね。今日は1日一緒に僕とホテルで休もう。まずはスパでリラックスしておいで」


と、天使のような美しい笑みを浮かべてそう言ったロイにより、私は今、ここにいる。
スパでリラックスさせてもらえるのは大変有り難いが、まさか全てをお世話されるとは思いもしなかった。
あくまで平民の子どもなのに手厚すぎる。
ロイの命令だから叶った贅沢だ。



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