悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「おはよう、ステラ。そんなに慌ててどうしたんだい?」

「…っ!ロイ!」



ふわりと笑うロイに、私は思わず大きな声を出してしまう。
さらに反射的にロイを呼び捨てにしてしまったので、私は慌てて自身の口を両手で覆った。



「も、申し訳ございません!ロイ様!」



バッ!とその場で勢いよく頭を下げ、すぐに先ほどの無礼すぎる言葉を謝罪する。
そんな私にロイは「顔を上げて、ステラ」と優しく言った。



「何故謝るの?僕はね、今、とても嬉しんだよ」



ルビー色の瞳が何故か本当に嬉しそうに私を見ている。



「君は平民であってもユリウスには砕けた態度を取っているね?僕にはそうしてくれないのに。平民の君にとって皇族も公爵家の者も同じ身分が上の者だろう?それなのにユリウスにだけステラはああだよね」



甘い声に甘い笑顔に甘い瞳。
私を見つめるロイの全部が全部甘い。
何故こんなにもドロドロしたものに見つめられているのかわからず、私は困惑した。

ロイが私を気に入っていることは知っていたが、こんなドロッドロの甘い瞳で私を見るような気に入り方をしていただろうか?




< 182 / 313 >

この作品をシェア

pagetop