悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜





「あははは!そうだね!確かにその通りだよ!」



おかしそうに自身のお腹を抱えているロイの考えなんて言われなくてもわかる。

幼い少女が何を言っているのだ、と思っているのだろう。
20歳の成人男性が、まだ未成年の私くらいの子どもと例え男女であったとしても、同じ部屋で一晩過ごしたところで、世間一般的には何の問題もない。

わかっている。私もそこはわかっているのだ。だが、ここは年頃の女の子のフリをし、部屋を絶対別々にしてもらう。
部屋さえ別々にしてもらえれば、逃走の機会などいくらでもあるはずだ。



「…私は本気で言っております」

「うんうん。そうだね。ステラは立派なレディだからちゃんと考えられるもん…ね…ふふっ」



少し不貞腐れたように頬を膨らませれば、ロイはそんな私を宥めるように優しく撫でた。
最後に堪えきれずに笑い出しているせいで全部台無しだ。



「…それじゃあ、レディの願い通り、僕たちの部屋は別々にしよう」



やっと少しだけ落ち着きを取り戻したロイが天使のような笑みを浮かべる。
こうして私は何とかロイと別々の部屋を勝ち取ることに成功したのだった。




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