悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「…ぅ、ゴボッ」
いつものように苦しさと共に咳が出始める。
かなり苦しいが、これさえ耐えれば一旦は落ち着くはずだ。
もう1週間も同じことを繰り返しているので大丈夫だ。
「ゴボッ、ガハッ」
止まらない咳の合間に口から血が飛び出す。飛び出した血はこの美しい部屋の美しい模様の描かれたラグに血のシミを作った。
ちょっとだけ申し訳ない気持ちになる。
「ステラ」
「…っ!?」
扉の向こうから私を呼ぶロイの声が聞こえ、思わず目を見開く。
今、このタイミングでロイが私の部屋に来るなんて!
「今日の夕食について話に来たんだ。入るよ?」
「…ま、待って!」
扉を開けようとしたロイを私は大声で叫んで制止する。
すると私のただならぬ空気を悟ったのか、ロイは一旦、扉を開けることをやめてくれた。