悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「どうしたんだい?ステラ」
「き、着替え中、な、なんです」
扉の向こうで不思議そうにしているロイに私は何とか息を整えて答える。
それからすぐに私の体を見た。
私の体はまだ幼く、19歳の姿ではない。
変化の途中なのだ。これからまだ咳き込むし、吐血もする。
隣の部屋に滞在していたロイになら悟られないだろうが、扉の向こうにいるロイにならこのままでは悟られてしまうだろう。
「…はぁ、はずか、しい、ので、は、早く、どこかに…ぅゔっ」
「ステラ?」
何とかロイを扉から遠ざけようと言葉を発するのだが、苦しさが私を襲い、上手く言葉を続けられない。
扉の向こうからは私を心配するロイの声が聞こえてきた。
「…本当に着替え中?何か隠し事をしていない?大丈夫なの?」
「だ、だい、じょう、ゴボッ!ゴボッ!」
ドバッと今日一番の量の血が私の口から飛び出る。
それはラグだけではなく、私の服にまで散り、ここら一帯に血の匂いを充満させた。