悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
第7章 天才魔法使いと魔法薬の真相
1.愛した彼女を探して sideロイ
sideロイ
本物のリタを探し続けて半年。
彼女だと確信を持てる女性は未だに見つけられていない。
最初は帝都を探し、それからその周辺の街や村を探した。それでも見つからなかったので、捜索の範囲はさらに広がり、今は帝国中を探している。
ここ、国境付近の街マルナへもリタを探す手がかりを追って来ていた。
マルナの街の奥にあるルーワの森にはリタが懇意していたこの帝国一の魔法使いキースがいる。
あの魔法使いならば、何か知っているのではないかと僕はルーワの森を目指していた。
だが、キースに会う前に僕はついに本物のリタだと思える女性を見つけた。
見つけたのだが。
「…ロイ様、あの女性を見失ってしまいました」
僕の目の前で騎士団の男の1人が申し訳なさそうに頭を下げる。僕はやっと見つけた女性を今、また見失ってしまっていた。
「この森に入って行ったことは確かだ。森全域に捜査の手を広げよう。ただ街に戻る可能性もあるから少数精鋭で街を捜査する隊も作れ。それから街の帝国民に協力を仰ぎ、街でも彼女を見つけられるようにするんだ」
「はっ」
僕の淡々とした指示を聞き、騎士がすぐに僕の目の前から姿を消す。