悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
「一旦、彼女の探し方を変えた方が良さそうだね。隊長を呼んで。それからステラの安否を確認させたよね?それを報告ができる者も呼んで」
「わかりました」
僕に指示を出されたピエールが真剣な表情で返事をする。だが、返事をしただけで、何故かその場から離れようとしない。
何か言いたげな目でこちらを見ている。
「どうした?」
「…いえ、あの少しだけよろしいでしょうか」
なかなか動き出そうとしないピエールに問いかければ、おずおずとピエールがこちらを伺う。
なので僕はそれを「ああ」と短く了承すると、ピエールは言いにくそうに口を開いた。
「…あの女性がロイ様が探しておられた本物のリタ嬢なのですよね…?」
「おそらくね」
「…と、ということはロイ様が以前おっしゃっていたあのお話は…」
「可能性の話だけどね。そうであることが一番自然だろう?」
「…ええ、まぁ、はい」
言いにくそうに言葉を紡ぎ続けるピエールに僕はふわりと笑ってみせる。
そんな僕にピエールは青白い顔で歯切れの悪い返事をした。
ピエールが言っていた〝あの話〟とは僕が立てたある仮説の話のことだ。