悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
僕はリタと婚約した後、早い段階で、今目の前にいる女が僕の愛している女性ではないと気がついた。
見た目は確かにリタだったが、中身が全然違ったからだ。
わがままで自分勝手なところもある彼女だが、時には聡明で努力家な面もあった。
不思議な二面性のある彼女のことを僕は面白いと思っていたし、そんなところが愛おしかった。
それなのにその聡明さや努力家な面が突然綺麗さっぱりなくなってしまったのだ。
他の者ならこんな話を聞けば、単に性格が変わっただけでは?と思うだろう。
だが、僕はある仮説を立て、考えていた。
リタには影武者がいたのだと。
わがままで気分屋なリタには苦手なことややりたくないことも多いはずだ。
そんなやりたくないことや苦手なことを押し付け、完璧にこなす優秀な影武者をルードヴィング伯爵は娘の為に用意していたのではないか。
だから僕の愛したリタには二面性があった。
わがままで自分勝手なリタと聡明で努力家なリタ。
時と場合によって変わるリタに僕はまるで2人のリタに会っている感覚でいたが、それはあながち間違っていなかったのだ。
その優秀な影武者、僕の愛した本物のリタが何かの理由で姿を消してしまった。
もし、この仮説が本当ならば、今までのこと全てに説明が付き、自然だ。