悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
なんて無茶なことをさせるのだろうか。
だが、これが私が代役を務めている〝リタ・ルードヴィング〟なのだから仕方ない。
実は私が〝リタ〟ではないと悟られない為にも私は完璧な〝リタ〟であり続けなければならない。
私は魔法薬でリタになっているただの平民だ。
それも孤児院出身の。
かれこれ私はリタの代役をもう8年も続けている。
8年前、孤児院で生活をしていた私をルードヴィング伯爵が引き取った。
そして私と伯爵はある契約をした。
それは私がリタの代役を務める代わりに私の生活を伯爵が保証するというものだった。
リタ・ルードヴィングはとても美しかったが、自己中心的であり、あまりにも気まぐれだった為、勉学を疎かにしていた。
貴族は12歳~18歳まで学院に通い、勉学に励む。
もちろん平民も同じように勉学に励むが、平民が通うのは学院ではなく学校だ。
リタ・ルードヴィングの代わりに勉学に励み、優秀な成績を残すように私は言われていた。
だがこれはおまけのようなものに過ぎない。
私がリタ・ルードヴィングになって一番に求められたものはこのミラディア帝国の皇太子であるロイ・ミラディアの婚約者の座を得ることだった。
ロイの婚約者の座を得た時、私と伯爵との契約は終了し、私は一生分の生活を伯爵から保証される約束だ。
だから私は8年間、死に物狂いで頑張った。
ルードヴィング伯爵家内でも学院内でも社交界でもどこででも、私は完璧なリタになりきり、文武両道は当たり前、常に成績はトップクラスで非の打ち所のない完璧なご令嬢を務めてきた。
美の女神と言わしめるほどの美貌と、圧倒的な学院内での成績。
性格の悪さ以外、リタ・ルードヴィングは完璧だった。
ただ性格は本当に非常に悪い為〝悪女〟と裏では呼ばれているがそこは知らない。
そこまでのフォローは求められていないので無視である。
ただの孤児だったが努力と環境は私を裏切らず、今の私がある。