悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜
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ロイと2人で皇帝の謁見の間へ向かう。
そこで本日皇帝陛下の元、私とロイの婚約式を行うのだ。
そう、私は今日、やっと正式にロイの婚約者となる。
つまりこのとんでも悪女リタの代役を終えて一生の生活を保障される楽しい生活を手に入れることに成功したのだ!
「なんだか嬉しそうだね、リタ。やっぱり僕の婚約者になれたことが嬉しいんだね」
「そうです、その通りです!」
「…違う意味なんだろうね」
優しく私に微笑むロイに嬉しそうに笑えば、ロイはどこか面白そうに瞳を細めた。
「君は僕なんて愛していない。どうして僕を愛しているフリをするのかな?」
「愛している時だってあるでしょう?」
「そうだね、まるで人が変わったみたいに僕に愛を囁く君は確かにいるね」
相変わらず鋭いロイの指摘に私は心の中で冷や汗をかく。
もちろん表面上はにこやかだ。
ロイは私がロイを愛していないことに気づいていた。
しかし本物のリタはロイを愛している為、ロイにとってはおかしな状況なのだ。
状況によって代役の私と本物のリタと代わる代わるロイの前に現れる。
2人とも同じだけどどこか違う。
その違うどこかをロイは一つ見つけてしまっていた。
自分を愛しているか愛していないか、だ。
ロイはまさか違う人物とまでは思っていないようだが、どこか変わってしまうリタを面白がり、興味を持っていた。