冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「それで、弟さんの罪をかぶろうと?」
まだ証拠はなく、俺の単なる想像に過ぎない。しかし、小早川は隠し通すことをあきらめたように、力なく頷いた。
「現場近くを通りかかった時、たまたま女性の悲鳴が聞こえて……駆けつける途中で、弟とぶつかりました。弟は先に逃げた仲間を追うか迷いながら、言ったんです。『親にも警察にも言わないで』って……泣きそうな顔で。そこまで追い詰められてたなんて知らなかったから、弟を置いてあの家から逃げ出したことを申し訳なく思いました」
逃げだしたという表現は、彼自身も実家が居心地のいい場所ではなかったという証左だろう。ご両親からのプレッシャーには、兄である彼も苦しんでいたのだ。
「でも、俺がいくら黙ってたって犯罪はいつかバレると思ったので、その場で靴と上着を交換して、弟が使ってたバイト用のスマホも預かりました。靴はサイズが違うので、目くらましのために同じサイズの靴をすぐに何足か買って……本当の自分の靴は、まとめて遠くのゴミ捨て場まで捨てに行きました」
小早川は一つひとつ、事件の夜本当にあったことを語り始め、それを舞鶴が記録する。
目の前の人物が本当に犯罪に手を染めていたなら容赦なくその身勝手さや残虐性を指摘して追い詰めるが、今回は弟の罪を被って虚偽の罪を告白しただけ。
同情する訳ではないが、彼が悪人でないことは明白だ。