冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「あなたがこのまま起訴されて有罪になっていたら、弟さんは兄を罪人にしたという負い目を一生背負って生きていかなければならなかった。そんな結末では誰も幸せになりません。どうか、真実を打ち明けた自分に胸を張ってください」
「はい……っ。すみませんでした……」

 小早川が深々と頭を下げる。これで捜査が終わったわけではないが、無実の人間に罪を着せることにならずに済み、とりあえず安堵した。


 取り調べの後、俺は事件を捜査した警察の担当者に連絡し、弟の犯行を裏付けするための補充捜査を依頼した。

 真犯人だった小早川の弟は、十六歳。まずは家庭裁判所に送られ、刑事処分が必要と判断されれば検察官送致となるだろう。

「神馬さん、なんだか変わりましたね」
「変わった?」
「ええ。婚約者がいると教えてくださった辺りから、雰囲気がやわらかくなった気がします。さっきの取り調べも、犯罪そのものについて突っ込むと言うよりは、兄弟愛に訴えかけた感じがして」
「……そうか」

 自分では無意識だが、舞鶴の言葉を否定はできなかった。

 そう言われれば、先ほどの取り調べは少し、男性に寄り添いすぎた気もする。身近に助けたい姉弟がいるからだろうか。

「もう昼だな。食堂に行って来る」

 無性に琴里に会いたくなり、舞鶴に告げる。気まずいからと朝はちゃんと顔を見なかったせいか、いつも通り食堂で元気に働いているかも心配だ。

 舞鶴は「私もランチの約束があるんでした」と慌ててバッグを持ち、俺より先に執務室を出て行った。

< 101 / 211 >

この作品をシェア

pagetop