冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
琴里はいつも通り、カウンターの奥の厨房で仕事をしていた。
小柄で手足もか細い彼女にとって食堂のような力仕事の現場はつらいのではと今さらのように思うが、そんなことを微塵も感じさせない溌剌さで動き回っている。
今日は月曜日なのでナポリタンの食券を手にカウンターに近づいていくと、ちょうど琴里と目が合った。しかし、彼女は挙動不審に視線を彷徨わせると、逃げるように厨房の奥へと引っ込んでしまった。
……もしかして、避けられただろうか。俺が昨夜あんな風に迫ったから?
「あら、ジンちゃん。今日もお疲れさま。ナポリタンね」
琴里がいない代わりにやってきた紅白婦人の片割れが、俺の食券を受け取ってくれる。
「……お願いします」
婚約者に対応してもらえずショックを受けていると思われたくないので、冷静な表情を崩さずに告げた。
食堂はちょうど忙しい時間帯のようで、紅白婦人も無駄口を叩かずさっさと調理作業に戻っていく。
俺はいつも座っている窓際のカウンター席に移動すると、時折琴里の姿をさりげなく目で追っては、もどかしい気持ちを持て余した。
ナポリタンは安定のうまさだったが、結局琴里を遠くから眺めるだけで昼休みは終わった。
気が晴れないまま執務室が並ぶ続く廊下を歩いていると、俺の部屋のドアが開くのが見えた。
舞鶴は外で食事をしていたはずだが、先に戻っていたのか?
なにげなくそう思っていると、そこから出てきたのは権藤検事正だった。