冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「……神馬さんの、心臓の音がする」
初めての体験に驚く子どものように、無垢な声で琴里が呟く。
抱き合えばお互いの鼓動を感じられる、そんな当り前のことすら知らなかった彼女が、ひどく愛おしい。
心臓が破裂しそうなのは俺の方だ。
「婚約者を抱きしめて、喜んでる音だ」
「嘘です。だって、私は偽物なのに」
「こういう言葉に騙されるのも、練習の一環だろう」
「そ、そっか……いちいち指摘してちゃ、意味ないですもんね」
俺の胸の中で、大真面目にこくこく頷く琴里。俺は彼女を抱きしめて甘い言葉を吐くことに正当性を持たせたいだけなのに、本気で〝練習〟だと信じているようだ。
騙しているようで後ろめたい思いもあるものの、こうして触れ合える距離まで近づけた喜びの方が大きい。
「あの、いつまでこうしてます?」
琴里がおずおず目線を上げて俺を見る。どうやら恥ずかしさに耐えきれなくなったようだ。しかし、一旦知ってしまった彼女のぬくもりを簡単には離しがたい。
「俺が満足するまで」
「それはいったいいつ頃でしょう……?」
「さぁな」
はぐらかすように言って、ますます腕の力を強める。琴里もあきらめたように身を預けてくれたが、ちょうどその時彼女の腹の虫が鳴いた。