冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「……そんな状態じゃ、婚約者のフリなんかとうてい無理じゃないか?」
手を伸ばして、琴里の頬に触れる。彼女はバツが悪そうに唇を噛んだ。
いじらしくてかわいい表情。たまらず、愛でるように優しく頬を撫でる。
「私も、そう思いました……。だから、お願いがあります」
「お願い?」
琴里が潤んだ目で俺を見つめる。真面目な話のようだと察し、スッと彼女から手を離すと、今度は彼女が俺の手をギュッと握った。
「外でちゃんとお芝居ができるようになるまで、家でも練習させてください」
練習……婚約者としての振舞いを、か?
「……具体的には?」
俺にとっては願ってもない申し出だが、勝手な勘違いだったら目も当てられない。
彼女がどこまで望んでいるのか、きちんと聞いておかなくては。
「ですからその……こ、こういうこととか……っ」
琴里がぎこちないロボットのような動きで一歩俺に近づき、腰に手を回してギュッとしがみついてきた。
とはいえ恥ずかしさが先行しているようで、体が密着しないよう不自然に直立している。
これは……本当に、練習が必要かもしれないな。
自分に都合のいい理由付けとわかっていたが、彼女を抱きしめられるのならなんだっていい。
俺は彼女の頭にポンと手を置いて撫で、もう一方の手で小さな肩を抱き寄せる。
「わっ」
小さく声を漏らした彼女を黙らせるように、その顔を自分の胸に押しつけた。琴里の髪から甘い香りがして、胸が切なく疼く。