冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「そばにいてくれるだけで幸せ……って、婚約者だったら、思うだろうなって」
羞恥に耐えきれず、言い訳のように付け足す。彼はフッと苦笑して、私の頭に手を置いた。
「わざわざ言い直すなよ。俺だってきみが本心じゃないことくらいわかってる」
そう……だよね。
あたりまえのことを言われただけなのに、胸の奥がつねられたように痛くなった。
私たちの婚約は偽装で、甘い言葉や触れ合いは、それに説得力を持たせるための練習。
嘘をつくことはお互い承知の上なんだから、言い訳したり謝ったりする必要はないのだ。
「食事は七時に運んでくると言っていたな。風呂、先に入ってくるか?」
「……はい。そうします」
「じゃ、その後で俺も――」
神馬さんが言いかけたその時、彼のポケットの中でスマホが鳴った。
どうやら電話のようで、画面を見て顔をしかめた彼を見ていたら急に不安になった。
検事は公務員だから基本的に土日は休みだけれど、重大な事件の犯人が送検されてきたりしたら、きっと突然の呼び出しもあるよね。
犯人の身柄を拘留しておける日数には制限があるから、取り調べを後回しにすることなんてできない。
もしかして、ここで帰ってしまう可能性も……。