冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
フロントの脇には様々な色浴衣が用意されていて、好きなものを部屋に持っていき、着用できるそうだ。
私もスタッフの女性に勧められ、紺地に白牡丹の柄が描かれたものを借りることにした。種類は減るけれど男性用もあって、せっかくだからと神馬さんも黒字に細かい縦縞の入った一着を選んでいた。
手続きが済むと、さっそく部屋に案内してもらった。
広々とした和室にテーブルと座椅子が置かれ、障子を隔てた隣の部屋には、畳の上にベッドがふたつ並んでいる。窓の向こうはウッドデッキになっており、庭の木々と、それを眺めながら入れる露天風呂が備わっていた。
「それでは、ごゆっくりお過ごしくださいませ」
案内してくれたスタッフが説明を終えて部屋を出て行くと、なんとなく緊張してしまう。
黙ったまま畳の上で立ち尽くしていたら、神馬さんが静かに歩み寄ってきた。
「俺の好みを押しつけたような、地味なデートになってしまって悪かったな」
「地味なデート……ですか?」
どういう意味だろうと首を傾げると、神馬さんが少し気まずそうに苦笑する。
「きみは若いから、映画や舞台を見るとか、遊園地や水族館に行くとか、そういう刺激のあるデートの方がよかったかと今さら気になってしまって。気が利かない男で悪い」
「いえ、全然そんなこと! 私は神馬さんがそばにいてくれるだけで……」
熱弁している途中で、自分が恥ずかしい発言をしていることに気づく。かぁっと頬に熱が集まるのを感じた。