冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「……ちょっと失礼する」
神馬さんは私に断ってからスマホを耳に当てた。
「神馬だ」
目の前で聞き耳を立てているのも気が引けて、私は部屋の隅に置いていた自分のバッグ近づくと、とりあえずお風呂に入るための準備を始める。
下着と基礎化粧品くらいかな。あとは、旅館のタオルと浴衣と……。
「今? 外出中だがなにか急用か?」
聞かないようにしようと思うのに、部屋は静かだしどうしても気になって、彼の声が耳に入ってきてしまう。
もし本当に急な仕事の呼び出しなら、こんなに遠くまで来ない方がよかったんじゃないだろうか。勝手に心配して胃が痛くなる。
「……そうか。あいにくだが遠慮させてもらう。埋め合わせはあとですると検事正に伝えておいてくれ。それじゃ」
彼は意外にあっさり……というか、むしろそっけなく通話を終わらせた。
相手は誰だったんだろう。『検事正』という単語が出てきたのも気になる。
「お電話……大丈夫、だったんですか?」
浴衣などの一式をそろえて抱え、再び彼のもとに歩み寄る。スマホをポケットに戻した彼は、軽く笑って私を見下ろした。