冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「いや、姉ちゃんは神馬さんのところ帰ってよ」
「こんな緊急時になに言ってるの。大事な弟が怪我してるっていうのに」
「……怪我したの、俺だけじゃないし」
弓弦がボソッと呟いた言葉に、目を瞬かせる。
そして、今さらのように事故の状況をまったく把握していなかったことに気が付いた。先ほどの看護師さんにも、相手がバイクであることと事故に遭った場所くらいしか聞いてない。
「それって、バイクの運転手のこと? もしかして大怪我なの?」
「違う。バイクの運転手は気づいたら事故現場からいなくなってたから」
「なにそれ、ひき逃げじゃない……!」
弟に怪我を遭わせておきながら、必要な応急処置をせず立ち去るなんて許せない。
犯人に沸々と怒りがわき上がる。
「それじゃ、他にも被害者がいるってこと?」
「うん。その人が俺を庇ってくれたんだ。そうじゃなきゃ、もっと派手にバイクに撥ねられてたと思う」
「命の恩人じゃない……。その人は今どこに?」
弟を助けてもらったお礼を伝えなきゃいけないし、その人の怪我の状態も気になる。
もし、弓弦を助けたせいで重傷だったりしたらどうやってお詫びすればいいだろう。
「仕事で調べたいことがあるから、職場に……東京地検に戻るって言ってた。怪我してたのは、おでこ……だったかな」
「えっ?」
東京地検? まさか……。
弓弦をかばってくれたという話も相まって、頭の中に〝彼〟の姿が像を結ぶ。