冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「東京地検にはほかにも決裁(けっさい)官がいるけれど、最終的にトップである権藤検事正の決裁を受けなければ、事件は処理できない。これが、東京地検のルールなのよ」

 これくらい常識だとでも言いたげな嘲笑を浮かべながら、舞鶴さんが説明を加える。

 悔しいけれど知らなかった。つまり、鏡太郎さんがいくら正しいことをしようとしても、権藤の手に握りつぶされてしまうの……?

「だから、私に逆らおうとするものなど基本的にはいないんだ。しかし、神馬の奴はどうも血の気が多くてほとほと困っている。私の派閥に引き込んで大人しくさせるか、地方の検察庁へ飛ばしてしまうか。色々考えてはいるんだが、あまり生意気なことを続けていると、今度は神馬本人を大型トラックで撥ねてしまうかもしれないね」

 冗談めかして言っているものの、権藤の目は笑っていなかった。

「弟の事故も、あなたが差し向けた人が……?」
「さあ。黙秘させてもらおうかな」

 否定しないところを見ると、やはりそうなのだ。

 トラックで撥ねるだなんて、殺人を予告しているのと変わらない。

 だからって、故意に人を撥ねた運転手を起訴しようとしても、その裁量はこの男次第。不起訴で終わらせることができてしまう。

 どう転んでも、この男のやり方は卑怯すぎる……。

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