冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「危ない……っ!」
とっさに弓弦くんを突き飛ばし、自分も倒れ込むようにしてその場から飛びのいた。弾みで地面に打ち付けてしまった額に痛みを感じたが、バイクに撥ねられた感覚はなかった。
すぐにバイクのナンバーを確認しようとしたものの、俺が立ち上がった時にはけたたましい音が遠ざかり、あっという間にバイクは見えなくなってしまった。
「痛って……なんだったんすか、あのバイク……」
弓弦くんのそんな声がして、俺は我に返る。彼は歩道に腰を下ろしたままだが、上半身だけ起こしていた。
大きなけがはないようだが心配で、彼のもとへ駆け寄ってしゃがみ込む。
「大丈夫か? とっさのこととはいえ、突き飛ばしてすまなかった」
「いえっ。むしろ助けてもらってありがとうございます。肘がちょっと痛いだけです。それより神馬さんの方が派手に血が出てます」
弓弦くんに指摘され、額の血が顎まで滴っていることに気づく。見た目ほど大したことはないと思うが、彼を心配させないようハンカチを当てた。
俺たちはその後、通行人が呼んだ救急車に乗せられた。弓弦くんはともかく俺はその場で実況見分に立ち会うつもりだったが、怪我をしているので後日改めてということになった。
ひき逃げの証拠が消えてしまわないか不安もあったものの、ジンジンとした額の痛みが強くなっていたので、大人しく警察に従う。