冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

 病院での手当は俺の方が先に終わったので、ひとまず琴里に連絡しようとスマホを取り出す。すると、非通知設定からの着信が一件。

 留守番電話まで残されていたので、事故の件といいなんとなく不穏なものを感じて、再生してみる。

【……余計なことに首を突っ込むからこうなる。自分が検察組織の一員だということを、もっと自覚しろ。態度を改めなければ、こちらも次の手を考えなくてはならない】

 ボイスチェンジャーを通した声だった。俺に、自らの声を聞かれたくないのだ。

 メッセージから察するに相手は検察組織の人間。誰か……なんて、深く考えるまでもない。

 前に俺の執務室の前で怪しい会話をしていた、権藤検事正と舞鶴須美。ふたりのうちのどちらかか、または共犯だろう。

 しかし、ここまで直接的に……まして犯罪行為に手を染めてまで警告をしてくるとは思わなかった。大事に至らなかったとはいえ、弓弦くんまで巻き込んでしまったのは俺の過失だ。

 このまま思い通りにさせるつもりはないが、琴里まで狙われたらと思うと、慎重にならざるを得ない。

 誰か、別の人間に動いてもらうか――。

 これからの策を練るうち、弓弦くんも手当てを終え処置室から出てくる。

 琴里に連絡をしたらしい看護師が『お姉さん、すぐにいらしてくれるそうです』と彼に声掛けしているのを見て、俺は琴里に会う前にここを出ようと決める。

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