冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

 事故後、すぐに彼女と会い言葉を交わしたことが知れれば、留守電を残した相手がなにをしてくるかわからない。琴里も弓弦くんも、今は俺に関わらない方がいいだろう。

「弓弦くん、俺は職場に戻るから、琴里によろしくな」
「えっ。会わないんですか? もうすぐ来ると思いますけど」
「急ぎで調べたいことがあるんだ。すまないが、先に失礼するよ」
「忙しいんですね……わかりました。危ないところを助けてもらって、本当にありがとうございました」
「気にするな。お大事に」

 助けてもらったどころか、弓弦くんは俺のせいで危ない目に遭ったかもしれないのだ。それを考えると、俺の方こそ謝りたい気持ちだった。

 幸い、琴里は事故の後弟のことが心配だからと俺のマンションには帰らない日が続いた。

 職場の食堂では顔を見ることができたから、元気な顔が見られるだけで今は十分だと、あまり接触を持たないよう心掛けた。

 電話やメッセージのやり取りくらいはしてもいいかと思ったが、余計に会いたい気持ちが募って帰宅を促してしまいそうで、自重した。

 琴里の方もまた特に連絡してくることはなかったから、弓弦くんとの生活に忙しいのだろう。

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