双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~

 父親との約束通り、平日の業務を終えた金曜の夜に、飛行機で久々の東京へと旅立った。

 羽田に着くとひとまず実家に帰り、挨拶もそこそこに権藤検事正の件について父親に詳しい情報を尋ねる。

 通されたリビングダイニングで母が酒の肴を準備してくれている間、俺と父はリビングで向き合う。

「証拠というのは決定的なものなのか? それに証人というのは、いったいどこの誰が?」
「まぁ落ち着け。俺も驚いたんだが、権藤の裏には次長検事の植木(うえき)がいるようなんだ。証拠を用意したのも決定的な証人となるのも、その植木の息子だ。奴はいきなりうちの署にやってきて『僕はこれまでに数十件の罪を犯しました』と言い出した。よくよく身元を聞いてみたらどえらい人の息子だったもんで署長も困り果てて、とりあえず任意で、ベテランの俺が話を聞くことになったんだ」
「植木次長検事の……?」

 次長検事とは、検察庁の中でも全国に一カ所しかない最高検察庁において、トップである検事総長に次ぐ役職だ。

 東京地検で権力を振りかざしている権藤検事正でも、絶対に逆らえない存在。そこまで上り詰めたほどの人物の息子が、まさか……。

< 168 / 211 >

この作品をシェア

pagetop