双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~
「ああ。その息子、無職の二十歳なんだが、大学生というわけでもなくかなり問題アリでな。これまで数々の事件を起こしては父親にもみ消してもらっていたらしい。それに協力していたのが権藤で、対価として金銭を得ていたようだ。彼らはそのやり取りをする時、必ず植木の自宅で行っていた」
「……自宅で?」
「外では壁に耳あり障子に目ありとでも思ったのかもな。しかし、それが裏目に出た。父親が自宅で汚い取引をしていることを知っていた息子が、つい最近、植木と権藤のやり取りを録音していたんだ」
父の言うことが本当なら、かなり決定的だ。
権藤検事正のみならず、最高検察庁の次長検事までもが悪事に手を染めていたというのは俺にとってもショックな事実だが、見過ごすわけにはいかない。
「しかし、息子はどうして最近になって録音を? ふたりの取引はかなり前からあったんだろう?」
「俺もそれが不思議だったんだが、ちゃんと理由があってな。本人が言うには二年前に闇バイトの片棒を担いだ時、自分は父親が手を回してあっさり釈放となったのに、仲間だった十六歳の少年は保護処分にならず、実刑をくらって少年刑務所に送られたらしい。それがきっかけで、自分の価値観に違和感を抱くようになったとかで」
「二年前の闇バイト……」
闇バイト事件は各地で頻発しているが、都内で十六歳の少年が関わっていた事件となると、数えられる程度だったはずだ。
俺が取り調べをした小早川と言う男がかばっていた弟……彼も十六歳だったはずだが、さすがにそんな偶然は……。