冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

【権藤の悪事を示す音声証拠と決定的な証人が見つかった。近々東京へ来れるか?】

 証拠と証人。やっとか……。そちらも待ち望んでいた連絡ではあったので、深い安堵が胸に広がる。

【すぐに確認したいから、金曜の夜の便でそちらへ帰る】

 そうメッセージを打ってすぐ、父親から返信が来る。

【了解。うちに泊まるんだろ? 久々に家族水入らずで貫太郎シリーズが見られるな! 母さんも楽しみにしてるぞ】

 真面目な話をしていたのに、突然浮かれたような文面になっており脱力する。俺を貫太郎沼に引きずり込んだのは父だが、時と場合というものがあるだろう。

 遊びに行くわけではないし、なんなら実家には泊まらずビジネスホテルでも取ろうと思っていたくらいなのだが……どうやら両親は俺の訪問を楽しみにしているようだ。

【ゆっくりドラマを見ている暇なんて――】

 そう打ちかけて、ぴたりと指を止める。

 よく考えれば、忙しさにかまけて最近実家に顔を出すことすらしていなかった。

 親孝行したくてもできない琴里たちのような家族もいる中で、俺は恵まれた環境にいるにもかかわらず不義理な息子だったかもな……。

 書きかけだった文字を消し、改めてメッセージを打ち直す。

【美味しい酒でも買って帰る。母さんにもよろしく伝えてくれ】

 送信から数秒で返ってきたのは、貫太郎の凛々しい顔の横に【御意(ぎょい)】の文字があしらわれた、父親お気に入りのスタンプ。

 琴里を失ってから笑顔を忘れていた俺の口もとが、ほんの少しだけ緩んだ。

< 167 / 211 >

この作品をシェア

pagetop