双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~
「その少年が最近出所したと知って、植木の息子はわざわざ会いに行ったらしい。なんでもお互い親が上級国民だから話が合うとかで、闇バイト仲間でも特に親しかったんだそうだ。植木の息子が少年刑務所はさぞつらかっただろうと聞いてみたら、少年はこう言ったそうだよ。『つらかったけど、兄に罪をなすりつけたまま逃げるより、自分で罰を受けることができてよかった。自分の罪と向き合う時間は、絶対に必要だった』と。それで、植木の息子も気づいたそうだ。自分の父親や権藤のやっていることが、どんなに間違っていたかってな」
兄に罪を……。にわかに信じがたいが、やはりあの時取り調べた男の弟のようだ。
「……その少年、名字は『小早川』じゃなかったか?」
すべての事件に関わった者の名前を記憶しているわけではないが、あの取り調べは印象的だったので、姓を覚えていた。
父親は少し考えた後、思い出したように頷いた。
「ああ、確かそう言っていたな。なんだ、お前が担当だったのか?」
「直接的にではないが、少しな。……とはいえ今回の件には関係がない。先に進んでくれ」
罰を受けてよかったなんて思う人間は少数派かもしれない。しかし、小早川の弟の言葉が、俺に新たな自信を与えてくれた気がする。