双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~

「とはいえ、一度有罪が確定している裁判だ。植木の立場から考えても、正当な手続きで家宅捜索させてもらえるとは思えない。……慎重に動く必要があるだろうな」
「ああ、俺も同じ考えだ。邪道にはなるかもしれないが、植木を出し抜くには例えば――」

 父と顔を突き合わせ、今後の捜査について意見交換をしている時だった。

 目の前のローテーブルにドン、と日本酒の瓶やグラスが乗ったお盆が置かれ、運んできた母親が俺と父とをじろりと睨んだ。

 俺が手土産に勝ってきた日本酒……。そういえば、話に夢中で酒どころではなかったな。

「もうっ。せっかく鏡太郎が帰ってきたっていうのに事件の話ばっかりして……私がそのなんとかっていう息子みたいにこっそりカメラを回してたらどうするの。捜査情報ダダ漏れよ」

 むくれた母が、グラスに酒を注ぐ。自分だけ話に入れず拗ねていたみたいだ。

「む。それはいかんな……。それじゃとりあえず飲むか、鏡太郎」
「ああ。そうだな」
「乾杯の前におつまみもってくるわね。お父さん、貫太郎のDVDつけといて~」
「御意」

 両親の平和なやり取りに、すり減った心が癒やされる。親孝行のつもりで帰宅してみたが、活力をもらったのはどうやら俺の方だ。

 せっかく東京にいるのだから、明日は琴里の手がかりも探ってみよう。

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