双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~
捜査が進展したことで風向きが変わったような気がして、琴里を探すのも上手くいくのではないかという、前向きな気持ちになれた。
父と相談し、俺は権藤を通じて植木にも目を着けられているだろうからと、息子に関する裏付け捜査は父に任せることにした。
父はこれまで出世の話をことごとく断って現場主義を貫いてきたそうで、検察庁の関係者には名前すら知られていないだろうと、自慢げに言っていた。
実家に泊まった翌日、俺は昼すぎから琴里捜しに動き出した。スーツだと目立つかもしれないので、街中に溶け込む地味な私服に身を包み、あちこちを歩き回る。
琴里がバイトしていたカフェ、仕事帰りによく寄ると言っていたスーパー、短い間ではあるが、ふたりで暮らしていたマンション。
東京にいた頃何度も捜しにいった場所をなぞるように訪れ、その度に、彼女との思い出が胸をよぎってたまらない気持ちになる。
それでも、手掛かりはまったく見つからない。
琴里……きみはいったいどこにいるんだ……?
街中をあてもなく彷徨い、琴里の姿だけを探すこと数時間。辺りが薄暗くなってきた頃、聞き覚えのある声が俺を読んだ。
「あれっ? ジンちゃんじゃない?」
「あらまホント。どうしたのよ死神みたいな顔して」
……この声は、紅白婦人。
もはや彼女たちのやかましささえ愛おしい思い出のような気がして、振り返る。