冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

 勝手に勘違いして体をくねらせる紅白婦人たちは無視一択。俺はテーブルに両肘をつくと、彼女たちに鋭い視線を向けた。

「琴里のために、ひと肌脱いでいただきたい」
「ひと肌って……ジンちゃん、あんたやっぱり……」
「悪いけどいくらジンちゃんがイケメンだからって、あたしたちそんなに安い女じゃ――」

 ふざけたお喋りに付き合っている暇はないので、俺は端的に用件を告げる。うるさいぐらいに賑やかな店なので、紅白婦人たちのやかましい声も目立たずありがたかった。

「あらやだ、ちょっと刑事ドラマみたいでおもしろそうじゃないの」
「それが琴里ちゃんのためになるんなら、喜んで協力させてもらうわ!」

 それからふたりの連絡先を尋ね、後で父から連絡させると約束を取り付ける。用が済んだ後はふたりの分を含めて会計を支払い、俺だけ先に店を出た。

 その足で駅に向かい、実家とは反対方向の電車に乗った。

 空いていた席に腰を下ろすと、もう一度年賀状を取り出して、琴里が今暮らしていると思われる住所を見つめた。

 ……青森へは明日帰る予定だから、今日はまだ時間がある。

 行ってみよう、と思った。

 本人に会えなくてもいい。ただ、琴里が今暮らしている町の空気を感じたかった。

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