双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~

「懐かしいな。きみにそうやって噛みつかれるの」
「そ、そういうの、思い出さなくていいです」
「思い出してるんじゃない。……忘れられないんだ」

 油断すると彼の口からは思わせぶりな言葉ばかりが飛び出すので、家に上げたのは間違いだっただろうかと思う。

 でも、彼がこちらを見ていない隙に結を抱っこする姿を眺めていたら、言葉では言い表せないほどの大きな感情の波が胸に押し寄せてきた。

 私は家族がバラバラになる辛さも、生きているのに会えないという切なさもよく知っているというのに、こうして双子を彼に抱っこしてもらう機会をずっと奪い続けてきた。

 開と結を産んで育てたのは私かもしれない。でも、あの子たちにも父親がいないわけじゃないのだ。

 もしかしたら、家族が一緒になって暮らす未来を選んでもいいの……?

「……琴里。どうしてきみが泣く?」

 私と鏡太郎さんにそれぞれ抱っこされ、結と開は大人しくなった。しかし今度は私が目に涙を浮かべているので、鏡太郎さんがそっと歩み寄り、私の顔を覗く。

「だって……」

 弟がいても、梓がいても、この胸には埋められない穴がある。

 別の相手じゃ意味がないのは、私も同じだ。

「やっと………この子たちをパパに会わせられたから」

< 198 / 211 >

この作品をシェア

pagetop