冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「申し訳ないですが、私は会えません」
「琴里たちが望んでいるのに、ですか?」
俺がそう言うと、目の前の村雨奏二は寂しげに目を伏せ、床の畳を見つめた。
彼は刑務所でも家族との面会を拒否していたそうだが、無罪となって社会復帰してからも、琴里や弓弦くんに会おうとしなかった。
代理人弁護士によると、会わせる顔がないから、だそうだ。
権藤に嵌められていたとはいえ、自分のせいで我が子ふたりに何年も過酷な生活を強いてきたことは、彼にとってなにより大きな大罪なのだろう。
しかし、琴里も弓弦くんも彼が思うより弱い存在じゃない。それを伝えたくて、正月休みの今日、俺は琴里の夫としてひとりで彼の自宅を訪れていた。
しかし、今のところ感触はあまりよくない。
「大衆は今、村雨奏二というよくわからない男が無実だったことよりも、検察の不祥事の方に興味が向いています。いまだにあの事件の犯人が僕だったと思い続けている人々もいるでしょう。私が父親面をしてあの子たちに会ったら、迷惑をかける未来しか想像できない」
……なるほど。裁判でいくら無罪になっても、一度自分についてしまった犯罪者のイメージを完全に払しょくすることはできない。
だから琴里や弓弦くんに会うことに躊躇いがあるのか。気持ちはわからないでもないが……。