双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~
「父親面、ではありません。あなたは間違いなく彼らの父親で、今でもその絆は消えていない。世間がどう思おうと、あなたの娘と息子は一度もあなたを疑ったことはない」
「どうしてそう言えるんです? 強要されたとはいえ、私は自白までしたんですよ?」
「……これを見てください」
傍らに置いたビジネスバッグから俺が出したのは、以前弓弦くんから譲り受けたまま返しそびれていた、村雨姉弟の大事な事件ファイルだ。
あの後中身をチェックしたところ、残念ながら捜査に役立ちそうな情報はなかった。
しかし、琴里と弓弦くんが協力して集めたありったけの新聞や雑誌の記事。丁寧に綴られた、裁判の傍聴記録。そこには、父親を心から案じる彼らの無償の愛が詰まっていた。
「あなたが逮捕されてから、ふたりが集めた記録です。手書きのメモもたくさんあります」
琴里の父は黙ってページをめくる。その表情からは何も読み取れない。
ただ無言で、ファイルの中身にジッと見入っている。
「……お父さんは、やってない」
しばらくして、ぼそりと琴里の父が呟いた。
俺も中身を改めた時に見たが、その文言はあちこちのページに散らばっていた。
琴里の、そして弓弦くんの、心からの叫びだ。