双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~

「神馬さんにぜひとも紹介したい女性がいるんですって。ですから、『神馬さんにその気はないと思いますよ』と言っておきました」
「なるほど。連絡をくれなくて正解だ」

 有能な舞鶴が報連相を怠るわけがないと思ったが、そういう事情だったのか。

 俺は元々恋愛というものにさほど興味が持てず、『いぶし銀・貫太郎』でも色恋沙汰がメインの回は飛ばしてしまう。

 とくにあのドラマでは、細やかな感情の動きよりわかりやすい勧善懲悪を見てスカッとしたいのだから当然だ。

 しかしそんな俺にも、これまで好意を寄せてくれる女性は何人かいた。強引なアプローチに押し切られ、お試しのような交際をしたこともある。

 しかし結局、誰と付き合おうと俺の中での優先順位は女性より勉強や仕事の方が上だった。どうやら自分は恋愛に対して適性がないらしいと理解してからは、不毛な交際自体しなくなった。

 舞鶴の前でもその話をしたことがあったため、先手を打って断ってくれたのだろう。

 交際すらまともにできない俺に、結婚を前提とした見合いなんて勧めるだけ無駄だ。

「でも、神馬さんって本当に好みのタイプとかないんですか? あ、セクハラだとお思いでしたら答えなくて構いません」

 さっぱりとした口調で舞鶴が問いかけて来る。別にこれくらいの雑談に目くじらを立てるつもりはないが、難しい質問である。

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