双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~

「好みか……。苦手な女性ならすぐ思い浮かぶんだけどな」
「苦手? どんな方ですか?」

 舞鶴に問われ、村雨琴里の姿を思い浮かべる。といっても、いつも調理着に身を包んでいるので、背格好と目の形くらいしか知らないが。

「……俺の平和な昼休みをことごとく邪魔してくるお節介な女性だ。こっちは純和食の塩サバ定食がいいと言っているのに、タイ料理のカオマンガイを勧めてくる奴があるか?」
「あ、もしかして食堂のスタッフさんですか? カオマンガイ、私も元気なおばさま達に勧められました。けっこう本格的で美味しかったですよ」

 オリエンタル系の香水を好んで使う彼女には、アジア系の料理も口に合うのかもしれない。ただ、そこまで絶賛されると妙に悔しい。

「あの不謹慎なメニュー名をなんとも思わなかったのか?」
「確かに不謹慎ですけど。つい口に出したくなる語感なので、考えた人はセンスあるなぁって思っちゃいました」
「俺の感覚の方が世間一般とズレているのか……? と。そんなことはどうでもいい。新しい事件記録が届いているから、取り調べの時間まで読み込んで補充捜査の方針を決めよう」

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