冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

 事件を捜査するのは警察だけの仕事ではない。まだ明るみに出ていない事実があれば補充捜査を依頼するし、どうしても自分の目で確かめたければ現場に出向いて捜査の指揮をとることもある。

 警察官たちには煙たがられるが、一点の曇りもない真実を追求するためには必要なことである。

 検察は罪を犯した者、またその被害者や関係者の人生を大きく変えるほどの権限を持っている。その使い方を誤れば、恐ろしいことになってしまう。

 だからこそ、少しの疑問も残してはいけない――。

 デスク上にうず高く積み上げられた事件記録を手に取ると、俺は気を引き締めて文字を追い始めた。


 検事の勤務時間は基本的には一般の公務員と同様だが、抱えている事件の量や捜査の進捗によっては残業になることも多い。

 その日は内密で調査している事件の資料に目を通そうと思っていたが、舞鶴が帰るまで待っていたためパソコンで目的のファイルを開くことができたのは夜八時を過ぎてからだった。

星影台(ほしかげだい)二丁目住宅内強盗傷害事件】

 公判資料のファイル名にはそう記載されている。といっても、三年前すでに被疑者に有罪判決が確定している、解決済みの事件だ。

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