冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す

「お疲れ様です。こんな時間にどうされました?」
『私ほど偉くなると仕事量も凄まじくてね。そういうきみこそ、残業は感心しないな。やっぱり、家に待っている人がいた方がいいんじゃないのかね。見合いの話、舞鶴くんに聞いただろ?』

 舞鶴が言っていた見合いの話か……。

 わざわざこんな時間に電話してくるほどの用件とは思えず、警戒心が湧く。

「……ええ、聞きました。検事正のお気持ちはありがたいですが、あいにく仕事で手いっぱいでして」
『きみほど優秀な男なら、どんな事件もすぐに片付くだろう。前の職場にいた時のように、余計なことにまで首を突っ込んでいるんじゃないのかね?』

 そう尋ねられると同時に、彼から電話がかかってきた意図を察する。

 検事正はどうやら俺をけん制したいらしい。確かに、横浜地検にいた頃も俺は俺の信念に従い行動していた。時に上司の指示に背くこともあった。

 とはいえ、今は表立って地検の方針に逆らうような行動はとっていない。にもかかわらず検事正がこんな時間に電話をしてくるなんて、探られたくない腹があるのだろうか。

 内心そう思ったが、馬鹿正直に手の内を明かす必要はない。俺は殊勝なふりを装って苦笑を漏らした。

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