冷酷検事は揺るがぬ愛で契約妻を双子ごと取り戻す
「すみません、横浜にいた頃は私も若く、血の気が多かったものですから。ですが今はもう組織の人間として、わきまえた行動を取るよう心掛けています。ご心配おかけして申し訳ありません」
『ふむ、それならいいんだ。しかし、きみは少々頭が固いところがある。やはり、一度私の紹介する女性に会ってみたらどうだ?』
ずいぶんとしつこいな。その女性に俺を見張らせようとでも思っているのか?
ここは嘘も方便、恋人でもいることにしてしまった方が楽に逃げられるかもしれない。
『すみません、検事正。なかなか言い出せませんでしたが、実は心に決めた人がおりまして……近いうちに結婚も考えています」
『なに? そういうことなら早く言ってくれたまえ。式にはぜひ参加させてもらうよ』
「ありがとうございます。いずれご紹介しますので」
『それじゃ、見合いは断っておく。ほどほどに残業は切り上げて、恋人を安心させてやりなさい』
「そうですね。ご忠告感謝します」
心にもないことを言って、受話器を置く。
今夜は調査を切り上げた方がよさそうだ。疑り深い権藤検事正が直接この部屋に来ないとも限らない。